学ぼう 『慈光』第76号より

 ここ最近の私のコラムは現状報告ばかりでしたが、今年から浄土真宗のことや仏教思想について学ぶ機会を設けたいと考えております。不定期になるかもしれませんが、真宗学について触れてみたいと考えています。

 はじめは、法事や法要で読む「お経」について書きましょう。浄土真宗の根本聖典は、「浄土三部経」と言います。それは『仏説無量寿経』上下二巻『仏説観無量寿経』一巻『仏説阿弥陀経』一巻を言います。親鸞聖人は「浄土三部経」の中で、真実のお経は、『仏説無量寿経』であるとおっしゃっています。その書物は、『顕浄土真実教行証文類』という長い名前が付いており、私たちは『教行信証』と略しています。これは今後も度々触れる機会があるので、今は割愛します。

 さて、「お経」と私たちは普通に言いますが、正確には「経典」といい、インドで書かれたものを指します。「インドで書かれたもの」とは、サンスクリット語で書かれたお経で、皆さんは梵字を想像するかと思います。正確には異なるのですが、今はローマ字化された経典を見ることができ、仏教研究では広く用いられています。

 では、インドで書かれていないお経があるのかどうかですが、中国で書かれたお経があり、学問的には「疑経典」と定義されています。「うたがい」と書かれてあるので、さも怪しいように思われますが、サンスクリット語の原典がない、またはサンスクリット原典がない可能性がある、つまり疑いがある経という意味から、「疑経典」と言われます。疑経典はインドから伝わった経典の影響を受けて、中国で作られました。有名なのは、『盂蘭盆経』(うらぼんきょう)や『父母恩重経』(ぶもおんじゅうきょう)です。お盆・盆踊りの元になった『盂蘭盆経』。親の恩を知り供養しなさいと説いた『父母恩重経』。親鸞聖人は、自分の書物では疑経典を引用しませんが、中国では盛んに読まれるようなったそうです。

 私たちは根本聖典である「浄土三部経」を重視し、読経することを作法としますが、最近、三部経読誦を聞かなくなりました。地方によって三部経読誦をしているとお伺いしましたが、大部なので、まともに読むと半日かかります。私達にとっては、必ず意味も理解し読めるようにならないといけない経典です。私は法事のとき、三部経の要所を略した経本を読んでいます。男性の場合は『仏説無量寿経』の一部を、また女性の場合は『観無量寿経』を読んでいます。四十九日(満中陰)法要や一周忌、三回忌など、それぞれに応じて読むようにしています。

 では次回から、何回かに分けて「浄土三部経」の内容について書きましょう。

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